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労災受給者も「打ち切り補償」で解雇可能――「最高裁判決」はどんな影響があるのか?
2015年06月21日 14時29分

仕事中のケガや病気で3年以上療養を続ける労働者について、使用者が一定の補償金を支払えば解雇できるルールをめぐる訴訟の判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は6月上旬、「国から労災保険の支給を受けている労働者も対象となる」という初めての判断を示した。

労働基準法では、仕事上のケガや病気で療養中の労働者を原則として、解雇できないとしている。例外として、療養開始から3年経過しても治らなかった場合、平均賃金の1200日分の「打ち切り補償」を支払えば、解雇できるとされる。その条件は、「使用者が治療費を負担している場合」だけと考えられていた。

今回の訴訟は、国から労災保険の支給を受けて休業中だった男性が、勤めていた私立大学から解雇されたのは不当だと訴えたもの。大学側が治療費を負担していない場合も、解雇が認められるのかが争点になった。最高裁の判決はどのような影響があるのだろうか。労働問題にくわしい大川一夫弁護士に聞いた。

仕事中のケガや病気で3年以上療養を続ける労働者について、使用者が一定の補償金を支払えば解雇できるルールをめぐる訴訟の判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は6月上旬、「国から労災保険の支給を受けている労働者も対象となる」という初めての判断を示した。

労働基準法では、仕事上のケガや病気で療養中の労働者を原則として、解雇できないとしている。例外として、療養開始から3年経過しても治らなかった場合、平均賃金の1200日分の「打ち切り補償」を支払えば、解雇できるとされる。その条件は、「使用者が治療費を負担している場合」だけと考えられていた。

今回の訴訟は、国から労災保険の支給を受けて休業中だった男性が、勤めていた私立大学から解雇されたのは不当だと訴えたもの。大学側が治療費を負担していない場合も、解雇が認められるのかが争点になった。最高裁の判決はどのような影響があるのだろうか。労働問題にくわしい大川一夫弁護士に聞いた。

●規定のないケースについて判断

「結論からいうと、影響は大きいと思います」

大川弁護士はこのように述べたうえで、労働基準法について次のように説明する。

「法律では、『労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり、その療養のために休業する期間およびその後30日間は、解雇してはならない』と定めています(労働基準法19条)。これを『手続き上の解雇制限』といいます。

一方で、(1)使用者が、その労働者のために治療費を支払っており、(2)療養開始から3年経過しても治らない場合に、平均賃金の1200日分の補償を支払えば、(3)今後の補償はしなくてよく、『手続き上の解雇制限』も解かれるとしています。これが『打ち切り補償』です(同法81条)」

今回の判決のポイントはどこなのか。

「この療養費の支払いについて、使用者ではなくて、労災保険法に基づく給付を受けている場合、『打ち切り補償』を適用できるかどうかは規定がなく、文言上明らかではありませんでした。

最高裁は今回、この規定のないケースに『打ち切り補償』を適用できると判断したのです」

●「解雇が増える」可能性も

どのような影響があるのだろうか。

「これまでは、労災保険法に基づく給付のケースでは、『打ち切り補償はできない』と考えられていました。現に、この裁判の下級審はそういう考え方です。

しかし、今回の最高裁の判決によって、今後、類似したケースで『打ち切り補償』が適用され、解雇が増える可能性があります」

労働者にとっては不利な判決だったといえそうだが・・・。

「ただし、『打ち切り補償』によって制限が解かれるのは、あくまで、『手続き上の解雇制限』です。実質上の解雇制限(労働契約法16条)の適用は受けます。

つまり、労働者が復職する可能性などを無視するなど、使用者が解雇権の乱用した場合は、その解雇は無効とされます、

したがって、『打ち切り補償』があったからといって、安易に解雇を認めるのではなくて、復職可能性がないのかどうかなど、きちんと判断されることが求められます。

今回の判決でも、解雇権の乱用があったのか否かなどついて、さらに審理が必要だとして、高裁に差し戻しています」

大川弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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