この事例の依頼主
70代 男性
相談前の状況
相談者は福井県内の建設会社でした。メインの土木事業の他に別事業を行っていますが、別事業について人材不足、後継者不足から別事業についてのみ事業譲渡を検討しているとのことでした。取引先が譲り受けを希望しているとのことでしたが、譲渡価格や譲渡の手法はまったく決まっていないとのことでした。別事業は、事業を行うにあたって、多数の許認可を取得することが必要ですが、現在は建設会社名義でこれらの許認可を取得しています。事業譲渡の際は、これら全ての許認可を譲り受け企業に承継することが条件になります。
解決への流れ
<採用したスキーム>・会社分割の手法会社全部の譲渡であれば、全ての株式を譲渡すれば、許認可も承継されるのが一般的です。しかし、今回はメインの土木事業は譲渡せず、別事業のみ譲渡を行います。別事業のみ通常の事業譲渡を行っても、許認可は承継されません。そこで、新設分割の手法により、別事業のみ切り出し、そのうえで、株式譲渡を行うという手法をとることになりました。具体的には、会社法上の新設分割の手続を行い、もとの会社から別事業のみを切り離し、100%子会社として株式会社を新設します。新設分割によれば、別事業に関する多数の許認可は、すべて新設会社に引き継ぐことができます。そのうえで、新設会社の全株式を第三者に譲渡することにしました。<譲渡価格>譲渡価格については、純資産額、許認可を取得するのにかかったコスト、将来の収益見込み等を考慮して算定しました。
最初の打合せから、株式譲渡契約書の締結まで、約1年かかりました。依頼会社の社長、従業員、譲渡先の会社担当者、会計事務所など、多くの方と何度も打合せを重ね、最適な手法をとることにより、許認可を維持したまま事業譲渡することができました。後継者不在により価値のある企業が消滅するのは大きな社会的損失です。福井の中小企業が一つ残らず存続できるよう力を尽くしたいと考えています。今回は、会社分割の手法により事業承継を行いましたが、様々なバリエーションがあり、条件によって採用すべき手法が異なります。必要に応じて、会計事務所など他士業と連携して最大限の支援を行いますので、お気軽にご相談ください。